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         東トルキスタン情報センター  2005        

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2005年10月8日


東トルキスタン憲法を読む

評論家 三浦小太郎 

「中国事情 民族問題研究」第2号(殿岡昭郎事務所発行)掲載 

 本誌(「中国事情」)では継続的に、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)の独立運動を取り上げているが、前号で殿岡昭郎氏が紹介したように、東トルキスタン独立政府による、東トルキスタン共和国憲法が2004年11月22日に発布された。本稿は当憲法を現在の東トルキスタンの情勢と歴史の観点から読み解くことによって、今後の独立運動の方向性について考察するものである。 

本憲法の特徴は何処にあるか 

 まず、言うまでもないことだが、今だ発足したばかりの亡命政府が設立した憲法について、その細部にわたって論じ法的な完成度を評価することは殆ど無意味だ。細部を論考するのではなく、本憲法の文案のみを読むことによって、この憲法が将来の東トルキスタン国家の枠組みと体制をどう志向しているのか、また東トルキスタンの歴史、現在の情況を踏まえてどのような意味を持ちうるのかを考えてみたい。 

 憲法前文並びに、第一章はこう書かれている 

 本憲法は、侵略者である中共によって一九四九年に占領された後祖国を離れた東トルキスタン難民の共通の願いによって制定したものである。本憲法は東トルキスタンの国民およびその子孫が民族の解放と独立を勝ち取ることを保障し、併せて解放されて後行う政治制度及び路線を明らかにすることを目的とする。 

第一章 国名、国家の性格、国旗、国章、民族の歌、誓いの言葉、言語、宗教     および首都 

第一条 国名を東トルキスタン共和国とする 

第ニ条 人権を尊重し、民主的で統一された法治国家とする。東トルキスタンの領土および民族統一に対する破壊を断じて許さない。 

第三条 東トルキスタンの国旗は青天星月旗とする。 

第四条 国章は新月の両側にそれぞれ九つの円を持ち、底部にある二つの円は一本の帯で結ばれており、新月の中央には花文字で「アラーの名によって始まる」との言葉が記されている。新月の両端には三つの星が左右対称に施されている。十八個の円は東トルキスタンに生活する十八の突厥民族を象徴し、三つの星は東トルキスタンにかつて存在した突厥ハン国、ウイグルおよびカラハン国を表す。 

第五条 国歌(独立行進曲)、民族の歌、誓詞(略) 

第六条 国語、宗教および首都

     言語はウイグル語とする(ハザク語、キルギス語などその他突厥の言語を民族の言語とする)。

     宗教は、イスラム教。同時に国家はその他の宗教およびその信徒の各種権益を保護し尊重する。

     首都はウルムチとする。 

第七条 本憲法の第一,,,,,六条は如何なる修正をも許さないばかりか修正の主張や提起をもできない。 

 ここまでの一~六条を「修正も許さないばかりか修正の主張や提起も出来ない」と明確に定義しているのがまず本憲法の特徴である。特に重要と思われるのは、国名を「新疆ウイグル」ではなく「東トルキスタン」とし、さらに国旗の定義(第4条)において、象徴的な形で東トルキスタンの全ての民族の平等な統合と、また中央アジアにおいて独自の独立国家を歴史的に形成してきた事が掲げられている。言語はウイグル語とし、国家宗教としてイスラム教が明確に選択されるが、同時に他宗教を信仰する自由は承認され、法治、人権擁護、民主主義などの近代政治の原則が謳われている。国家制度としては自由な選挙による大統領制であり、また宗教については「第十章 公民の権力と国会の職権 第四五条」において、「国会は、東トルキスタン国民が自己の権力を行使することおよび宗教を信仰することさらに法律の前での平等を保障する。国会は、個人の信仰の自由を制限し、言論と出版、集会の自由および政府に申請する自由を束縛するいかなる法律をも制定できない。」とかなり厳格な指定がされている。 

 さらに、亡命政府はあくまで、現在の抑圧者と戦う姿勢が必要であるが、第2章には次のように記される。 

抵抗運動の方向性を示唆する憲法条文 

第二章 東トルキスタン共和国亡命政府 

第八条 2004914日アメリカ合衆国首都ワシントンにおいて成立した東トルキスタン亡命政府が、東トルキスタン国民を代表して職権を行使し、我々の祖国を侵略者中共政権の手中から解放するまでは、東トルキスタン共和国の唯一の合法的な機構である。 

第九条 東トルキスタン亡命政府の主要な任務は、世界の全ての民主、正義、平和を愛し人権を尊重するすべての国家と国際連合を主とするすべての国際組織、人権機構と協力し併せてその支持と援助を勝ち取り、東トルキスタン国民が中共の侵略者政権が推進する国家テロリズムと戦い、東トルキスタンの独立を勝ち取ることである。(第十、第十一条は7月30日東トルキスタン国会によりキャンセルされた) 

第十二条 東トルキスタン亡命政府の各部長は、総理を首班とする内閣を組織する。

      政府の規約に違反する部長に対しては三度警告するが、この警告を無視する部長には内閣の決定とそれに対する総理の批准によって内閣から除名する。 

第十三条 内閣は年に一度かあるいは二度会議を開催して政府活動計画の実施状況について総理および内閣に対して報告し、常務協商委員会の協議および政府活動計画の具体的な方法と措置がしっかりと実行されているのかを討論する。 

中国と政治、経済関係を持つすべての東トルキスタン公民は、議員あるいは部長に選出されないし、国会議員と政府職員は、その在任期間中如何なる理由にしろ中国およびその殖民支配下の国家および地区に赴くことは許されない。 

 ここでは、いかに中国支配と戦うかの具体的な提案は示されないが(憲法である以上当然であろう)逆に、どのような戦術を選ぶかを法案の形で暗に指定している。まず「世界の全ての民主、正義、平和を愛し人権を尊重するすべての国家と国際連合を主とするすべての国際組織、人権機構と協力し併せてその支持と援助を勝ち取る」事が原則であり、国際社会に現在東トルキスタンで中国政府が繰り広げている人権抑圧の実状を、広く国際社会に認知させるよう訴えていくこと、テロリズムとの誤解を招かぬよう、平和的な非暴力の精神で抵抗運動を展開していく事が示されている。また、東トルキスタン独立運動を、イスラム原理主義との関係をほのめかしながらテロリストとみなしてきた中国政府に対し「東トルキスタン国民が中共の侵略者政権が推進する国家テロリズムと戦い、東トルキスタンの独立を勝ち取ることである。」と明言することによって、現在の中国政府こそ各民族に対するテロ政策を実施している事を突きつけているのだ。後述するが、この姿勢はダライ・ラマ法王やチベット亡命政府の非暴力抵抗運動の姿勢から学ぶ事が多かったものと思われる。また、第十三条の文面は現在の中国政府との間の非妥協的な姿勢を明記したものだろう。 

 さらに、「第三章 議員の選挙および国籍」においても、四年間に一度の民主的な選挙(十八歳以上の公民に選挙権がある)により国会議員が選出される事、しかし、第十五条において「東トルキスタン国内において侵略者と協力し、敵あるいは侵略者を援助し、利便を与えたものは、国会議員となれない」とされ、逆に第十六条では「国家の占領と如何なる関係もなく、敵あるいは侵略者にいかなる援助も与えたこともなく、彼らに庇護を提供したことのない東トルキスタンに原籍のあるものは、すべて東トルキスタンの公民である。東トルキスタンの国外にあったとしても、自己を東トルキスタン人であるとみなし、東トルキスタンを祖国であるとするものは、すべて東トルキスタンの公民である」という、独立運動の精神に漲った、「未来の国家にアイデンテイテイを持ち、新たな国づくりに参加する」精神を持つ人々の国内外での幅広い連携を呼びかけている。 

 これ以降も、国会の役割、大統領の権限(四〇歳以上、大卒という資格を持つ公民のうちから自由選挙で選出され、国会において総理候補を指名する)厳格な法治主義(同時に法に定められない違法な逮捕や操作の禁止)など、この憲法はほぼ国際社会で承認しうる民主的な精神に根ざした物となっている。しかし、それらの文案は何よりも独立を彼らが勝ち取った後の整備が必要な部分であり、以上述べてきた点に、この憲法の精神はほぼ尽くされているように思われる。では、この精神は、どのような現実と歴史の中から生み出され、またどのような未来を志向しているのだろうか。

(続く)

  2005年10月8日


© Uygur.Org  11/02/2004 21:40   A. Qaraqaş  日本語メール: info@eastturkistan-gov.org